LINEMAN NETWORK 特別インタビュー
WE ARE LINEMAN Vol.1
Q.休日の過ごし方は?
いろいろと。競輪。
Q.ラインマンになったきっかけは?
うちの父親が土建業をやってますもんで、それで、送電線工事という仕事が来たわけですよ。そこで初めて送電線の基礎の方に携わって、それが原点です。
Q.会社の雰囲気は?
うちら基礎(今は基礎がメイン)と、上の方の工事とまたちょっと違ってるから、往々にして言えないんだけど、なるべく楽しく仕事をやるようにはしているつもりです。
Q.印象に残っている出来事は?
土砂崩れで鉄塔が倒れて、7径間くらい鉄塔や電線が倒れて、建て替えというか、それをやった時ですね。
Q.大事にしてる言葉や格言は?
「初心忘れるべからず」かな。
平野電業株式会社
野口善信
Noguchi Yoshinobu
1948年生まれ。75歳。富山県出身。1985年に入社。2002年マスターラインマンを取得。
Q.休日の過ごし方は?
映画見たり、ゴルフ。
Q.ラインマンになったきっかけは?
うちの祖父がこの会社を最初に始めたので、小さい頃に現場へ連れられていって、その流れですね。
Q.会社の雰囲気は?
うちの会社は、良くも悪くも、自由な会社なもんですから。 肩肘張って、そんな感じもなく。
Q.印象に残っている出来事は?
災害の復旧とかで行く時、2日間寝ずにとか、そういうのもあったもんで、それですかね。
Q.大事にしてる言葉や格言は?
「手抜きしない」。ってことですね、何事も。
平野電業株式会社
平野博之
Hirano Hiroyuki
1972年生まれ。51歳。富山県出身。1993年に入社。2023年マスターラインマンを取得。
マスターラインマンになって変わったことは?
野口
まあ、与えられた仕事を正確に順調にやっていくいう、安全でやっていくいう感じですね。うん、 それしかないと思う。
この仕事のいいところは?
平野
工事終わった時は、綺麗な線とか見たらやりがいにできますけど。
この業界は、仕事が終わったら終わりっていう、会社会社してないというか、ちょっと特殊だと思うんで。そういうところも若い子はいいんじゃないかな。終わりっていったらもう終わりで、定時までおらんないかんとか、そういうのはあんまりないんで。会社会社してないというかね、昔ながらというか。
マスターラインマンが語る、ラインマンという仕事。
まず、先輩マスターラインマンの野口さんから、自己紹介をお願いします。
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はい。平野電業所属の野口善信です。
野口さん
ありがとうございます。平野電業さんでは、どのような立ち位置で、どのような仕事をされていますか。
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今は鉄塔に上らないので主に土木の方で、若い衆をちょっと面倒見るような、そんな感じです。
野口さん
では、新しくマスターラインマンになられた平野さん、自己紹介をお願いします。
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平野電業所属の平野博之です。
平野さん
平野電業さんでは、平野さんはどのような立ち位置で、どのようなお仕事をされていますか?
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私の方は、鉄塔建て替えとか組み立て、それと電線の張り替えなど、送電線全般、ですね。
平野さん
ありがとうございます。それでは、順番にお話を伺っていきます。 まず、ラインマンになったきっかけというのを教えていただけますか?
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うちの父親が土建業をやってますもんで、それで、送電線工事という仕事が来たわけですよ。そこで初めて送電線の基礎の方に携わって、それが原点です。
野口さん
それは、今から何年前ぐらいのことでしょうか?
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50、60年近く前かな。
野口さん
初めてそういう仕事をやってみて、そこから、もうそのまま平野電業さんに入られたのですか?
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いや、うちの親父が「野口組」というのをやっとったもんで、そこに20年ばかりやってまして、そのあと、平野電業へ入りました。
野口さん
平野電業さんに入られた時の思い出などは何かありますか?
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うーん、思い出というか。自分は親父が死んで、仕事が取れなくなったもんで、平野さんにお願いして入れてもらったわけです。
野口さん
では、平野さんのラインマンになったきっかけを教えてください。
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僕はですね、うちの祖父がこの会社を最初に始めたので、
その頃は家族全員で現場行って、泊まって、そういう状態だったもんですから、小さい頃に連れられていって、その流れですね。
平野さん
家業の流れっていうのがお二方に共通しているというか、元々、お父さんやおじいさんがされていた仕事を、そのまま引き継がれていっているということですね。
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そうです。
二人
平野さんはどのタイミングで、手伝おうというか、自分もその道に行こうと思われたのですか?
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はい。一回他の会社に勤めたんですけども、ちょっと合わないなということで、(平野電業に)お世話になることになって、それからです。
平野さん
でもやはり、ご実家の家業をなんとなく見て育っているということですよね。
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そうですね、はい。
平野さん
やっぱり自分が動きやすかったっていうのはありましたか?
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うーん、今考えると、そうですかね。
平野さん
次の質問です。「ラインマン」と言っても、 例えば、基礎を作る方とか、鉄塔を組み立てる方とか、架線工事をする方とか、結構それぞれにいろんな仕事がありますよね。
今、野口さんがされている仕事は、ラインマンの仕事の中でどこの部分を担っていらっしゃるのですか?
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何もないとこから穴を掘って、それで基礎材を入れて、コンクリして、それで(鉄塔を)作る仕事です。
野口さん
そうなんですね。一度私は鉄塔の現場を見たことがあって、基礎を作るのは本当に大変だなと感じました。
それでは、野口さんは基本的には富山の土地土地の鉄塔の基礎を作られているのですね。
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うん、僕は、東北電力、東京電力、中部電力と、若い頃、そっちばっかり行っとった。
野口さん
じゃあ、北陸にいないことも多かったんですね。
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全然北陸にいなかったです。20年ぐらいは。
平野電業に来てから、北陸で仕事をするようになった。
野口さん
そうでしたか。最初は全国の鉄塔の基礎と組立を。
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そうです。全国で揉まれてきました(笑)。
野口さん
そして今は北陸の鉄塔の基礎を作られて。
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そうです。まあ、穴掘りが好きです。 機械で穴掘り好き。出来上がってくから。
野口さん
では平野さん。ラインマンの数ある仕事のうち、平野さんはどのようなことをされていますか。
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私は主に野口さんの基礎ができた上から、鉄塔組み立て、 電線張り替えが主です。
平野さん
じゃあ鉄塔を地組みして、碍子を吊るとか、線を張るとか。組み立てもそうですけど、そういうことを平野さんがされているんですね。
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はい、そうです。
平野さん
平野さんは、元々高いところは得意だったんですか?
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もうのぼったら、のぼれたっていう感じですか。じゃあ得意なんですね。
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うん、まあ、その日に鍛えられたもんで。先輩に。
平野さん
自分も若い頃は上ばっかり上ってました。全然平気でした。高校時代からのぼってたから、アルバイトで。
野口さん
若い頃からやっていると、もう当たり前になっていくんですね。
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そうそうそう、15歳ぐらいからやっとると、もうそういう子おるもんな、うちに。2人ぐらいおるよな。
野口さん
ちなみに、今日、後ろにボルタリングがありますけど、これは、会社で運営されているということですが、 お二人もされるんですか?(※インタビュー会場が平野電業(株)が運営するボルダリングジム「レトラス」)
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いやいやいやいや…今日来てやったけど。
野口さん
これからボルタリングやってみようかな、とかは特に?
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いや、特にないね。やると、どっか(体が)いかれる。
野口さん
ちなみに今1番若い人って何歳ぐらいですか。
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19か。高校出て2年目やな。これ(ボルダリング)やっとる。名古屋から来た人。
野口さん
でもボルタリングをやっている人がラインマンになって、その人がボルダリングでオリンピックに出て……となったら、夢がありますよね。
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まずないと思う。仕事と違う。これと仕事と違う。全然違う。
野口さん
でもまあ、そういう人も現れる可能性もあるので、なんか期待したいですね。
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うん、今のとこ、いないけど。
野口さん
ところで、野口さんは仕事で今までで一番印象に残っている出来事、ふっと振り返って、あの時のことは思い出すなあという現場はありますか?
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そうだね。鉄塔が倒れて、150mの鉄塔を建て替えたのが印象に残っていますね。
野口さん
それは、どのような状況だったのですか?
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土砂崩れで鉄塔が倒れて、7径間くらい鉄塔や電線が倒れて、建て替えというか、それをやった時ですね。
野口さん
何年くらい前のことですか?
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あれは大体、20年位前かな……
平野さん
そや20年位経つ。
野口さん
土砂崩れで、鉄塔の山が崩れてしまったんですか。
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うん。1基、鉄塔が倒れたの。その連鎖反応で、他の鉄塔もアームが折れたりした。 それはちょっと印象に残ってますね。
野口さん
あ~。急斜になっているから、1基倒れると他も影響を受けるということですか。
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そうそう、線があるでしょ。それで引っ張られて。
平野さん
線があるから、連鎖反応でそこらへん3基、4基って全部、引っ張られる。電線が国道へ全部ばさーっと落ちて。
野口さん
大変だったという印象ですか。
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んー、まあ、そういうことですね。
野口さん
それはどれくらいで復旧できたんですか?
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6ヶ月ぐらいじゃなかったかな。
野口さん
その時、平野さんは?
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いました。
平野さん
一緒にいらっしゃったんですね。平野さんもその時は大変だったなという。
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うん。そうですね。エイプリルフールやったから嘘かと思ったけど、その倒れたのがもう、すごい鉄塔で。
平野さん
不勉強なのでお聞きしたいんですけど、その6か月間の間は、その地域は電気が通らないっていう状態がずっと続くんですか。
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そうそうそう。
野口さん
じゃあ、すぐ現地に行かれて、6ヶ月間、ずっと作業ですか。
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そうですね。民宿に泊まっとったです。羽咋(はくい)の民宿に。
野口さん
では、次に平野さんの一番印象に残っている現場を教えてください。
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今の野口さんのもあるんですけど、やっぱり災害の復旧とかで行く時、2日間寝ずにとか、そういうのもあったもんで、それですかね。
平野さん
これは本当に身に染みて思うんですけど、ラインマンの方たちに出会わなかったら、災害復旧って、当たり前にできているような感じで我々過ごしてきてしまっていて、でもやっぱりいつ何時でも、北陸圏内で何かあった時には、すぐ駆けつけなきゃいけないっていう状況下にはあるんですよね。
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そうですね。
平野さん
で、即座に復旧させるっていうことを平野電業さんでもやられているということですよね。ところで、新人の頃に、辛かったな、とか、これが毎回、実はちょっと辛いなということは何かありますか?
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ま、辛い言うより、先輩がものすごい腕がいいもんで、それについていかにゃなもんで、 それに負けずにやった記憶がありますわ。うん。辛いことはあんまりなかったね。 うちの仕事やから。
野口さん
平野さんは?
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うん。僕も辛いとかはないですけど、20歳そこそこで、もう体もできてないもんで、毎日ついていくのがやっとでした。
平野さん
イメージでは、僕も研修鉄塔に上らせてもらった時、立っているのもやっとだったのですが、それをおふたりは日々されているわけで。恐怖とか、そういうものは感じないのですか?
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いや、たまに感じた時あります。なんか違った仕事、自分はその仕事をしたことないのに、 違った人の事に携わると、あ、ちょっとおっかないなっていう感じしたことあります。あとは、 普通に仕事しとれば、うん、大丈夫です。
野口さん
平野さんは?
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ありますよ。怖いと思ったこと。電線に乗る仕事があるんですけど、 それだともう川底まで200mとか、そういうとこもある。
平野さん
命綱とか、ああいうワイヤーをしっかりつけていたとしても、 落ちる圧力がすごいって聞いたんですよね。すごく危険な職業だとは思うんですけど、でも、ラインマンの皆さんってそこをマイナスに捉えている方が誰もいないというか、ちゃんと気を付けてやるっていう。そういう実際に危ないっていう現場もあったりしたんですか?
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僕はないですね。
平野さん
ちなみに、それぞれ得意な作業があったら教えていただきたいんですけど。これは好きだな、とか。
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得意な作業。別にそれ、普通だと思っとるから、別段。
野口さん
決まった作業をもう淡々とというか、真剣に。
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そうそうそうそう、それ普通にやってる作業だから、特別じゃないから。昔だったら、ボルト(に油を塗る作業)は、女の人が塗っとった。奥さん連中が来て。家族でやっとるから。昔、関西の方行ったら、みんな家族で来て、 奥さん連中が油塗ってた。
野口さん
分業でできることをやっていたんですね。
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うん、今はそうじゃないけど。
野口さん
病院に泊まったり。学校に泊まったりしてみんな。
平野さん
平野さんはどうですか?
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(得意な作業は)特にないです。
平野さん
作業自体本当にすごく複雑で、色々あるんだなと思って。昨今、山の中に熊がよく出ますけども、熊は大丈夫ですか。遭遇されたり。
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うん、ま、ぱたっと会ったことあるけど、熊に。自分は上で熊は下だったから、 10mほど先におったけど、熊が逃げていった、そういう時あったな、福井県。
野口さん
熊は、遭ったことあります。
平野さん
身の危険を感じたことは。
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いや、もう……
平野さん
逃げていく熊が。
野口さん
普通襲いかかってくるんですよね。
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いやさ、出会い頭かなんかでぱたっとあった時じゃないかな。普通だったら、熊は逃げていく。人間の気配感じると。
野口さん
これまで怪我とかされたことはありますか。
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いや、全然。
野口さん
うーん、そんな目立ったやつはないです。
平野さん
それは、普段から会社として、気をつける安全ルールがあるからですか。
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ルールはありますね。
平野さん
朝の朝礼で。
野口さん
では次の質問をさせていただきます。仕事を始める時に、必ずするルーティーンとか、例えば現場に行く時は必ずお守りを持っていくとか、神棚に何かを置いてお祈りをするとか、そういうものはありますか。
━━━━━━
いや、別にないです。
野口さん
今まで特に、もうそういう願掛けみたいなものはなく?
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うん、全然。
野口さん
平野さんはどうですか?
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ないですね。 なんかあればいいけど(笑)。
平野さん
うん、やっぱり自分の体、力を信じてやっております。
野口さん
かっこいいですね! ところで、ラインマンという言葉は当時からありましたか?
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あったような。後からあったような気したけど。昭和何年かな。50年ぐらいかな、50年。
野口さん
50年、一応「ラインマン」という言葉があったとしたら、じゃあ、仕事を始められた時にはもう、自分はラインマンだなっていう自覚のようなものはあったのでしょうか。
━━━━━━
なかったです。そういうラインマン言う名前が出てきてから、ああ、うちらラインマンかなと思っただけですよ。
野口さん
ちなみに女性はどうですか。女性ラインマン。
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いいんじゃないんですか。
平野さん
いらっしゃいますか、今。
━━━━━━
いないですけど、他の会社なら、前、おったね。電力さんもおるね。
平野さん
管理職みたいのならおるけど、現場で実際に働くいうたら、おらんのじゃないんかな。
野口さん
力仕事やもんね。
平野さん
実際、可能だと思いますか?
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ま、仕事の内容によっては。
平野さん
ちょっと可能じゃないと思うけど、基礎の方は。ああいう、普通の道路工事とか、そういうとこの仕事なら女性でもできるけど。鉄筋作業とか。
野口さん
なるほど、体力が違いますよね。
━━━━━━
マスターラインマンのお話を、ちょっとだけ聞かせていただきたいんですけど。野口さんは先輩マスターラインマンということで、従事されているすべてのラインマンの方のお手本になる方かなと思うのですが。
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まあ、そうじゃないんかな。
野口さん
それは、仕事の面においても。
━━━━━━
そう。
野口さん
技術面、仕事に向かう姿勢とか含めても、全部皆さんの、見本になって。勤続年数が長ければもらえるっていうことじゃないですもんね。
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ええ。推薦がないとダメなんじゃないかなと思うんやけど。それははっきりわからんのやけど。
野口さん
もらった時は、どんな気持ちでしたか。
━━━━━━
「え」言ったけど。まあ、ずっと班長やっとったからもらえた、20年も班長やっとったからもらえたのかなっていう感じですよ。
野口さん
誠実に同じことをずっと繰り返すことって本当に難しいですよね。でも、それをやられたからマスターラインマンの称号を得たのだとお話を伺っていて思いました。ちなみに平野さんは新人マスターラインマンと伺っておりますが、どんなイメージですか。マスターラインマンとしてはどういう気持ちでいらっしゃいますか。
━━━━━━
うーん、スペシャリスト。そういう感じはしてました。
平野さん
スペシャリストの方がいる会社は成長していくんじゃないかなと思います。お話を伺っていても、やっぱり考えていることの幅が広いというか。マスターラインマンになられて、気持ちの変化だったり、またギアが1段上がるみたいな感覚になったりしましたか?
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いや、それはないですね、僕は。普段通り。
平野さん
そうですか!それは野口さんも同じですね。
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まあ、与えられた仕事を正確に順調にやっていくいう、安全でやっていくいう感じですね。うん、 それしかないと思う。
野口さん
さすが、まとめてくれたんで(笑)。
平野さん
それでは次の質問です。「ラインマン」は、いっぱいいるイメージがありますか?それとも少ないイメージですか?
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架線だったらいっぱいいるけど、僕ら基礎(今は基礎がメイン)だったらやっぱ5、6人。少ないです。
野口さん
なるほど。業界全体では人はちょっと足りていないイメージですか。
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ちょっと少ないね。
野口さん
それは働いている方たちから見ても、仲間が基本的に少なくて、やっぱり労働の負担というか、1人1人の負担がちょっとずつ多いという印象ですか。
━━━━━━
こういう業界に入る人が少なくなったんじゃないかなと思うんです。うん。
野口さん
逆に昔は多かったですか?
━━━━━━
昔は多かったです。普通の一般の土木やっとった人も、手伝ってくれてやってたから。
野口さん
平野さんの現場はどうですか。
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うーん、全国で言うと少ないと思いますね。そして高齢化なもんだから、僕でももう大分歳なもんで。
平野さん
やっぱり若手が少ないですか?20代。
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そうですね、はい。
平野さん
新卒で入ってくる子や、高校を卒業してすぐ入ってくる子は、少ないですか。
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年に1人ぐらいかな。
野口さん
なぜ、この業界に入ってくる人が、少ないのかなと思われますか。
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どうかな。決まった仕事、毎日毎日違うから。同じ仕事ずっとじゃあんまりないから。どうかな。そういうので好きな人もおるんですけどね。
野口さん
どういう風に改善したら、もしかしたら増えるかもしれないなっていうのはありますか。
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待遇じゃないけ。一番はそれだと思うけど。それが噂になれば、みんな来たがるだろうけど。
野口さん
確かに。あとは、デジタル化していくとか。クレーンが自動化していくとか、そういうのがあったりはすると思うんですけど。でも、この業界に関しては、やっぱりそれはまだまだ難しそうな。
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難しい難しい。
野口さん
何十年変わらんもんね。
平野さん
全然変わらない。55年全然変わらない。
野口さん
だそうです(笑)。
平野さん
山の方で仕事、やることは全然変わらない。ただ、便利な機械が出てきただけで、やることは変わらない。
野口さん
野口さんがいうと説得力がありますね。
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普通は山の中1時間かけて歩いていくでしょ。そこヘリかなんかで行って、仕事やりやすいようにしてくれりゃいいんだけど、なかなか工事費に反映してくれない。
野口さん
ラインマンの方たちは場所を守りながら、山行くのも山道作って。
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せめて送り迎えのモノレールでもいつもあればいいんだけど。歩くしかない。俺ら年寄りには堪えるから。若い人はいいけど。去年は現場、そういうとこ行ったんだけど。
野口さん
どうでした?
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いや、一回行っただけで足ガクガクなって、若い人はすすすっと上がっていくけど、やっぱ俺ら年寄りだから、足に堪える。
野口さん
山ですか。
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まあ道はあるんだけど、作業員のことを考えてモノレールをちょっと作って欲しいんやけど。
野口さん
みかん畑にモノレールあるでしょ。みかん畑、モノレールでみかん運搬してる、ああいうの使ってるんだけど、それもなかなか難しい。だから、これからの仕事は、そういうのをしなかったら、なかなか誰もしなくなるよ。
平野さん
誰もしなくなってしまったら、困りますよね。
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みんな困ると思うよ。誰もしてくれんかったら。
野口さん
これからもし、ラインマンを目指したいなっていう人がいたら、ちょっと希望になる話ってありますか? こういうのがやりがいだよっていう。
━━━━━━
工事終わった時は、綺麗な電線とか見たらやりがいにできますけど、この業界は、仕事が終わったら終わりっていう、会社会社してないというか、ちょっと特殊だと思うんで。そういうところも若い子はいいんじゃないかな。
終わりっていったらもう終わりで、定時までおらんないかんとか、そういうのはあんまりないんで。会社会社してないというかね、昔ながらというか。
平野さん
(始業)9時!(終業)5時!ではなくて。
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うん、それは全然ないです。ま、やるときはやります。
平野さん
ただ、ピンチの時にはやっぱり何を置いても駆けつけなきゃいけないっていう、やっぱりそこは、警察官とか消防士、そのレベルですよね。
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うん。でも、近頃、鉄塔倒れんね。昔はよう倒れたんやけど、近頃じゃ。
野口さん
うん、強くなったんよね。穴もね、深かったりするし。
平野さん
基礎の作り方も変わったんですか?
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まあね、そうだろうね。強度強くしたから、基礎。昔は基礎小さかったからね。だから、もう基礎ごと倒れた。基礎ごと、抜けた。今はないと思うけど。地滑りとかそういうんでない限り。
野口さん
私がラインマンを目指そうとしている人間だとしたらなんと声をかけますか? こういうことを目指して頑張れよ、といったような。
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その子が電線に乗りたくて入ってきとるんか、鉄塔に上りたくて入ってきとるんかによって、違いますね。
野口さん
鉄塔に上りたくて入ってきている場合はどうですか?
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そうそう、自分で鉄塔上りたい言うたら、なら教えてやるって、こうなるけど。中途半端じゃあ、あかんなと。上りたいっていう子、俺らの頃はおったけどな。昔はおったけど。鉄塔上りたい、電線の上にのぼりたいってやつがおった。
野口さん
まず、こういう仕事があるっていうことは周りは知らんと思うんで、そっからだと思うんですよね、僕は。
平野さん
そうですよね、まずは知ってもらいたいと。
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先入観あるからね、危険だよっていう最初の先入観。
野口さん
私は昔、東名高速道路を走っていて、静岡あたりだと思うんですけど、鉄塔の上でサーフボードのようなものに乗って移動されている人を初めて見た時、 どんな仕事しているんだろうとすごく興味をもって。でも、気づかないとこの仕事のことはわからないですもんね。
━━━━━━
うん。
平野さん
やっぱり、知ってもらいたいですか。
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まあ、若い子が入ってくるなら。
平野さん
もっといっぱい入って欲しいですよね。世代交代もやっぱりありますし、教えていかなきゃいけない、教える時間もありますしね。
じゃあひとつ、平野電業、私の会社はこういう会社だよ、こういうところがすごくいいよ。だから、みんな平野電業においでよというとしたら、どんなところがありますか。
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まあ、若い人が定着してくれるような感じで、 指導なり色々とやりたいと思っとるんですけど。
野口さん
会社の雰囲気はどうですか?
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うちら基礎(今は基礎がメイン)と、上の方の工事とまたちょっと違ってるから、往々にして言えないんだけど、なるべく楽しく仕事をやるようにはしているつもりです。
野口さん
平野さんはどうですか。
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うちの会社は、良くも悪くも、自由な会社なもんですから。 肩肘張って、そんな感じもなく。
平野さん
案外みんな自由でやってるから。気楽な会社言うかね。
野口さん
先輩後輩もそんなにもないし。
平野さん
いい会社は割と皆さんが自由っていうイメージはありますね。自由にものを考えられて、みんなで意見を出して話し合える会社は、結構成長しているような気がしています。人が育っていっているというか。
でも、技術的にはやっぱり先輩はすごい技術を持ってるから、負けない、負けたくないし、 追いつけ追い越せでやっているから技術が伸びてるんだろうなと思うんですけど、そういう環境があるということですね。
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まあ、あると思うけど、(平野さんの方を見て)そっち、どうかの(笑)。
野口さん
やる気があれば誰でもウェルカムですか?
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もちろん。
平野さん
だから、やる気のある子だったら、その人に注目して色々と、この子にはなんか教えてやろうかないう感じするけど、知らん顔しとる人にはこれあかんな思って。
野口さん
なるほど。ありがとうございます。
みなさんは、自分が大事にしてる言葉や格言、例えば、初志貫徹とか、そういったものはありますか。
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うーん、際立ってないけど、ま、「初心忘れるべからず」かな。
野口さん
僕は、そういう格言はないですけど、「手抜きしない」。ってことですね。何事も。
平野さん
いろんなことをやられると思うんですけど、自分がやることを突き詰めてやるってことでしょうか。
━━━━━━
それもありますし、ルールを守るとか、この作業を手抜かないとかですね。
平野さん
最後の質問です。お休みの日は、何をされていますか?
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いろいろと。競輪。
野口さん
競輪一筋ですか?
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そうです。
野口さん
僕は、映画見たり、ゴルフ。
平野さん
ゴルフは会社でやられるのは?
━━━━━━
何人かいます。
平野さん
普段結構プレッシャーのかかる仕事だと思うので、お休みの日にリラックスする時、何をされているのかなと思ったんですが。
━━━━━━
いや、仕事のことは常に考えとる。休みの日でも、こうしたらこういいなというの考えてる。
野口さん
すごいね。俺、逆。持ち込まない。
平野さん
自分はいつも仕事のこと考えてる。
野口さん
おふたり違うんですね。おふたりがマスターラインマンになっているのがなんかわかります。野口さんの職人気質なところとか、平野さんも、仕事のルールのようなものが明確になっているし切り替えをするところとか。
ところで、野口さんの年齢を聞いてびっくりしたんですけど、いくつぐらいまで、一線というか、やっていけるものなんですかね。
━━━━━━
そうね。体が動く限り大丈夫じゃないかなと思うんやけど。それと、頭。
野口さん
おふたりとも、実年齢よりもお若い感じがしますが、秘訣というか、なにかやられていることはあるんですか?日々、訓練とか、鍛練、何か気をつけていることはありますか。
━━━━━━
ちょっと柔軟体操とか、そういうのはやってますね。
野口さん
平野さんは?
━━━━━━
いや、特に。
平野さん
ほんとうですか。とてもシュッとされていますが。
━━━━━━
この人、まだ若いから。俺らもう70過ぎると、やっぱり体を動かさんと、次の日、やっぱり、うん、 堪えるから。あとは、うん、健康でやれば、80ぐらいまでできるんじゃないかな。
野口さん
ボケにゃ大丈夫そう(笑)。
平野さん
かっこいいですね!今日は素敵なお話をありがとうございました。
━━━━━━
ありがとうございました。
野口さん
ありがとうございました。
平野さん